
グイン・サーガ4 ラゴンの虜囚
栗本 薫
早川書房
この本について
仕事でも日常でも、気づけば視界が曇っているような感覚が続くことがあります。理由がはっきりあるわけじゃないのに、世界そのものがぼんやり遠くなるあの感じです。前に進めているのかどうかもよくわからず、自分だけ夢の中を歩いているような気分になることもあります。 今回の『グイン・サーガ4 ラゴンの虜囚』に保存されていた抜粋を見ていると、まさにその「夢の中をさまよっているような人間の感覚」や、「自分ではどうしようもない力にのみ込まれていくときの無力さ」の描写に刺さっているんだろうなと感じました。深い闇の中を歩いているような描写や、苛烈さ・憤懣・沮喪といった、生々しい感情の揺れがそのまま物語の空気として立ち上がってくるところが、この巻の特徴でもあります。登場人物たちが、それぞれの恐れや葛藤と狭い場所で向き合わざるを得なくなる展開なので、自分の内側にたまった澱と響き合いやすいんですよね。 この本が効いてくるのは、無理に気持ちを切り替えるのではなく、まず「そういう曇りのある視界で生きている自分」をそのまま認められるところだと思っています。登場人物の双眸が炯々と光った一瞬にふっと救われたり、茫漠とした景色の中にかすかな道を見つけられたり、そんな“微妙な転換”が読んでいる側にも伝染してくる。大きな励ましではなく、旱天に慈雨を得たような、ごくわずかな潤いを受け取れる物語です。 現実を一気に変えたいわけじゃないけれど、今の視界の濁りをそのまま抱えて歩きたい人に刺さる巻だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの44%が集中しています。
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