
この本について
古典を読むたびに、「なんでこんなにとっつきにくいんだろう」と手が止まることがよくあります。言葉は難しいし、人物の気持ちはつかみにくいし、物語の世界に入る前に疲れてしまう。学校で習った知識を思い出しても、どうしても“試験のための古文”が頭をよぎってしまうんですよね。 この本を読んで面白かったのは、作者がまず「当時の人たちはとにかく退屈していた」というところから話を始めてくれるところでした。後宮という狭い世界で、話題も自由もない女性たちが、衣装や調度品の細かい描写にこだわる理由を“退屈”という一言で説明されると、妙にすとんと腑に落ちるんです。教科書では味気ない情報に見えた描写が、「暇つぶしの工夫」という生活の匂いを帯びてくるだけで、キャラクターの息づかいが一気に近くなる感覚があります。 もうひとつ刺さったのは、「今の感覚をいったん脇に置いて、その時代の人になりきる」という姿勢です。文法を知っていても、価値観のモードが切り替わっていないと、古典はどうしても“異国の言語”のまま。逆に、当時の退屈や人間関係の窮屈さを想像しながら読むだけで、物語の解像度がぐっと上がります。古文が苦手というより、“時代の空気を知らないだけだったのかも”と思わせてくれるのが、この本のやさしいところです。 古典をもう一度ちゃんと楽しみたい人や、「昔の人の気持ちが分からないまま読み進めるのがつらい」というタイプの人には特に刺さるはずです。文法より前に、物語の温度に触れられる一冊でした。
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