
この本について
忙しく働いていても、ふとした瞬間に「自分だけ取り残されてるのかな」とか、「ちゃんと生きている感じがしないな」と思うことがあって。周りは前に進んでいるように見えるのに、自分は同じ場所でぐるぐるしているような、あの落ち着かなさ。川上未映子『シャンデリア』を読んでいると、まさにその揺らぎの中にいる “声” が、妙にこちらと地続きに感じられました。 デパートをさまよう主人公の視線は、きらびやかなものを見ているはずなのに、どこか冷めていて、でも完全には突き放せなくて。その距離の取り方が、私たちが普段やっている「平気なふり」にちょっと似ているんですよね。ブランドの店員を前にしたときの自意識とか、買う気もないのに試着を頼むあの無根拠な強気とか、あとで一人になると急に沈んでいく感じとか。読んでいて、妙に顔をそむけたくなる瞬間がありました。 そして、唐突に差し込まれる老婆への残酷な言葉や、シャンデリアが落ちてくる想像に取り憑かれたような描写。ここまで来るともう「善悪」じゃなくて、心の奥でずっと燻っているものが形を持ってしまっただけのように読めてしまいます。誰だって言葉にできない苛立ちや虚しさを抱えながら、表向きは普通の生活を続けている。その構造が、自分の内側にもあると気づかされました。 うまく説明できない停滞感を抱えている人、特に「ちゃんとしている自分」を演じるのに疲れてきた人には、この短篇はけっこう刺さると思います。読んだあとにすっきりする話ではないですが、自分の感情の輪郭だけは少しだけはっきりする、そんな読後感がありました。
読んだ内容を、もう忘れない。
BookNotion Zなら、Kindleのハイライトを自動で保存・整理。Notionにエクスポートして、いつでも振り返れます。
無料ではじめる
クレジットカード不要

