
高い窓 フィリップ・マーロウ〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
レイモンド チャンドラー and 村上 春樹
累計読者数3
平均ハイライト数 5.3件/人
star総合評価 31/100
boltライト読書型
この本について
仕事でも人間関係でも、「自分は何をどこまで話すべきなんだろう」と迷うことがよくあります。相手の気分や場の空気に合わせて動いているうちに、どこかで自分がすり減っている気がして、でもどう線を引けばいいのかはよく分からない。そんなときにチャンドラーのマーロウを読むと、妙に気持ちが落ち着くことがあります。 この作品の中のマーロウは、何でも見抜く天才探偵ではなく、むしろ「何を語らずに済ませるか」を選び続ける普通の人に近い存在です。知らないことには答えないし、知っていることでも必要な相手にしか渡さない。相手の誠意がないなら、自分の誠意も差し出さない。その姿勢が、こちらの曖昧な現実感とやけに響き合うんです。日々いろんなことに巻き込まれながらも、最低限の矜持だけは守ろうとしている感じが、妙にリアルで。 さらに、登場人物の言葉やしぐさの描かれ方が、嘘や緊張を抱えた大人たちの“生活感”そのものなんですよね。葉巻に火をつける時の動作が毎回同じ男とか、家庭を求めて間違った相手を選んでしまう女性とか。派手な事件の裏に、現実の疲れや諦めが静かに滲んでいる。そこが、単なるハードボイルドのカッコよさ以上に刺さってきます。 派手な爽快感よりも、「迷いながらも自分の線だけは守りたい」と思っている人に向いています。読み終わったあと、少しだけ自分の態度を整え直したくなるような物語です。
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