
アウシュヴィッツの図書係 (集英社文芸単行本)
アントニオ・G・イトゥルベ and 小原京子
この本について
日々過ごしていると、つい「こんなことでイラつくなんて自分は小さいんじゃないか」とか、「怖さをごまかしたまま動こうとしてないか」とか、そんなモヤモヤが溜まる瞬間があると思います。私も同じで、ちょっとした行列で不満が出る自分を持て余したり、勇気と無謀の境目がよく分からなくなることがあります。 『アウシュヴィッツの図書係』を読んで強く感じたのは、極限の状況に置かれた人の視点に触れると、普段の自分の感覚が少しずつ整っていくということでした。例えば、雪の中で長時間並ばされても、彼らは「普通に怒れること」を懐かしむ。そういう場面に触れると、日常の苛立ちと距離ができて、呼吸が深くなる感じがあります。また、恐れながらも一歩も引かない姿勢について語られる場面は、「勇敢であることは、怖さを消すことじゃない」という、ごく当たり前だけど忘れがちな視点をもう一度拾い直させてくれます。そして、本がなぜ危険視されるのかというくだりは、考えることそのものの価値を思い出させてくれる部分でした。 この本は、心を揺さぶる重さもあるのですが、それだけではなくて、自分の中の基準を静かに作り直させてくれるような読後感があります。特に「最近、何が大事なのか見えづらい」と感じている人には深く刺さると思います。 現実から距離を置くためではなく、現実をもう一度見極めるために読む本として、そっと手元に置いておきたい一冊でした。
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