
黒い迷宮 ルーシー・ブラックマン事件15年目の真実 (早川書房)
リチャード ロイド パリー and 濱野 大道
累計読者数3
平均ハイライト数 3件/人
star総合評価 39/100
boltライト読書型
この本について
最近、とくに事件や不祥事のニュースを見るたびに、「加害者じゃない家族まで責めるのって本当に正しいんだろうか?」とか、「もし自分があの場にいたら、同じ行動をしなかったと言い切れるのかな……」みたいな、言葉にしづらいモヤモヤが残ることが多いです。誰かの失敗や弱さを安全な場所から断じるのは簡単だけど、自分に置き換えると一気に曖昧になる。あの感じです。 『黒い迷宮』は、そういう“曖昧な部分”を丁寧に触ってくる本でした。保存されていた抜粋にもありますが、「私なら絶対にそんなことはしない」と誇らしげに語る人に対して、本当にそうだろうか、と問う著者の姿勢がまず刺さります。読んでいると、善悪の線引きが思っていたよりずっと脆いことに気づかされますし、他人の行動を語るときの自分の思い込みにも向き合わされます。 また、この本は「日本では家族もまた責任を負うとみなされる」という文化的な背景を、事件を通して容赦なく照らします。被害者家族と加害者家族、それぞれがどんな視線に晒され、どんなふうに壊れていくか。その“構造”を見せられることで、ニュースを見る目が少し変わっていきます。そして、東京という街が抱える「疎外感の逃げ場」としての側面も描かれ、加害者個人だけでは説明しきれないものが浮かび上がります。 派手な結論があるわけではないですが、事件を材料に「人はここまで複雑になりうる」という現実をまっすぐに受け止めさせてくれる本です。表面的な意見に違和感を覚えている人にこそ、静かに届くと思います。
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