
この本について
仕事をしていて、「ちゃんと求められてはいるんだけど、これって自分じゃなくてもいいんじゃないか」とふと落ち込む瞬間ってありませんか。私もよくあります。やるべきことはこなしているし、手を抜いているわけでもない。でも、どこかで自分の仕事が“文化的雪かき”みたいに思えてしまう。そんな気分のときに、この本で紹介されている村上春樹の視点が静かに効いてきました。 村上春樹がフリーライターを描くときに込めた、自分の仕事に対するあの複雑な距離感。「誰かがやらなきゃいけないし、自分はちゃんとやれている。でも替えはいくらでもいるかもしれない」。この感覚に触れるだけで、妙に安心するところがあります。そして彼が翻訳に向き合う姿勢――語学力だけでなく、その作品への偏った愛が必要だという話――は、自分の仕事にも“好きでいられる部分”をちゃんと残していいんだと思わせてくれます。翻訳が文章修業の場になるように、日々の仕事にも自分を鍛えてくれる側面があるかもしれない、という視点もさりげなく背中を押してくれます。 誰の役に立っているのか見えづらい仕事ほど、自分だけの「偏った愛」をどこに置くかで意味が変わる。この本は、そんな実感をゆっくり育ててくれます。仕事と向き合う姿勢を少し整えたい人に刺さると思います。
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