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P+D BOOKS 誘惑者

P+D BOOKS 誘惑者

高橋たか子

講談社 / 199511

累計読者数3
平均ハイライト数 4.3件/人
star総合評価 46/100
trending_up後半加速型
check_circle推定完走率 63%

この本について

人との距離感がよく分からなくなる時ってあります。相手の話を聞きすぎても苦しくなるし、突っぱねればそれはそれで後味が悪い。議論しているつもりが、理屈とは別の何かがむくむく育っていく感じもあって、「これって自分の問題なのか、相手の問題なのか」が分からなくなる。ああいう宙ぶらりんな時間、けっこうしんどいですよね。 『誘惑者』を読んでいると、その曖昧で説明しづらい“人と自分が混ざる瞬間”が、言葉になるというより、描写として目の前に置かれるような感覚があります。相手の言葉を全部受け取ってしまう性質とか、ウソと本当を分けようとすることで人格に入ってくる揺れとか、他人の生を自分に重ねた途端に生まれる微細な“加害”の気配とか。自意識の継ぎ目みたいなところを、高橋たか子はすごく静かに拾ってくれます。読んでいて救われるというより、「ああ、こういう質感の迷いを抱える人間って確かにいるんだ」と思えるのが、この作品の効き方だと思います。 とくに刺さるのは、自分を守るためではなく、しぶとく「自分のまま相手の言葉を全部吞む」ようなあり方が描かれているところ。強さにも弱さにも分類しづらくて、でも確かに存在する態度です。こういう複雑な揺れを抱えた人物たちの関係を追っているうちに、自分の中の“説明しきれない部分”をそのまま置いておくことに少し寛容になれる気がします。 人との関係でいつも少し疲れてしまう人に、じんわり刺さる一冊です。

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