
感性でよむ西洋美術 NHK出版 学びのきほん
伊藤 亜紗
この本について
美術館に行っても「なんとなくきれい」で終わってしまったり、作品の前で言葉が出てこなくて、結局なにを見たのかよく分からないまま帰ってくることってありますよね。僕もずっとそうで、「センスがないだけなのか…」と勝手に落ち込んでいました。 この本を読んで救われたのは、感性でよむというのは直感を鍛える話ではなく、むしろ言葉をしっかり使うことだ、と言い切ってくれたところです。たとえば作品同士を比べることで、自分の中に眠っていた言葉が勝手に引き出されてくる感じがある。さらに、絵画の役割が時代とともにどう変化したのかを知ると、見えてくるものががらっと変わります。窓の代わりだった絵が、キュビスムでは「こっち側に飛び出してくる」圧迫感をつくり出すようになる…そういう視点を知っているだけで、作品の前に立ったときの感覚がまったく違うんです。 もう一つ大きかったのは、ルネサンスやバロックのような様式の移り変わりが、人間の理性や宗教の揺れ動きと深くつながっていること。法則化された絵が生まれたり、感情を爆発させる絵が必要とされたり、そういう背景を知ると「これは何を表しているのか」と身構えずに、時代の空気ごと味わえるようになる。美術史が急に遠いものじゃなくなりました。 作品の前で言葉を失いがちな人、あるいは「美術を楽しめる人って一部の人だけなんじゃ…」と密かに思っている人には、かなりしっくりくるはずです。感性を“つくる”というより、今もっている感覚に名前を与えていくような一冊でした。
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