
この本について
仕事や人生の迷いが続くと、「そもそも人はどう生きてきたのか」と、いまの自分から少し距離を置いて考えたくなることがあります。とはいえ、哲学書を読むほどの元気もなく、かといって自己啓発の綺麗ごとには向き合えない。そんな中で、釈尊の生涯や当時の思想背景を丁寧にたどる本に触れると、肩の力がふっと抜けることがあります。 この『原始仏教入門』は、超人的な物語としてではなく、実在した一人の人間としての釈尊を描いてくれるところがありがたくて、混迷する時代の中で、なにを見て、なにを選ばなかったのかが静かに伝わってきます。六師外道に象徴される雑多な思想や迷信の中で、なにを疑い、なにを残したのか。そのプロセスを知ると、自分がいま抱えている判断の迷いにも、少しだけ光が入るような感覚がありました。また、釈尊の出生の記録や各国の年代のズレなど、歴史的事実を淡々と追う記述が多いので、「信じる/信じない」以前に、まず地に足がつくのもこの本の良さだと思います。 神秘性や教義に飛びつく前に、釈尊という人物そのものの立ち上がりを知りたい人に向いています。迷いが多い時期に、世界の混沌に向き合った一人の人間の足取りをたどることは、それだけで十分な学びになる本でした。
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