
デスチェアの殺人 上 ワシントン・ポー (ハヤカワ・ミステリ文庫)
M W クレイヴン and 東野 さやか
この本について
人の心って、自分でも説明がつかない動き方をするときがありますよね。怖い夢を見て眠るのが嫌になったり、過去の記憶がふいに足を止めたり、周りの善意すら疑ってしまったり。頭では「もう大丈夫」と思っていても、身体のどこかがずっとざわついている感じ。僕も仕事をしていると、そういう“理由のない不安”に振り回されることがあります。 『デスチェアの殺人 上』は、一見するとカラスやアナグマ、宗教団体、奇妙なタトゥーと、事件性の強いワードが目立つミステリなんですが、読んでみるとむしろ「人が抱え込んでしまうもの」の物語だと感じました。ポーが悪夢に悩まされていたり、話したくない気持ちと向き合わされたりする場面に、救われる読者が多いのもわかります。彼自身が完全無欠なヒーローではなく、むしろ“うまくいかない自分”を抱えたまま前に進もうとする姿が、そのまま悩みの整理のヒントになるんですよね。 事件の裏にある宗教観や価値観の衝突も、ただの刺激としてではなく、「人はなぜ信じるのか」「信じることで何を守ろうとするのか」という地に足のついたテーマとして描かれていて、自分の中の凝り固まった考えが少しほぐれる感じがあります。誰かの正義が、別の誰かの恐怖になることって、現実世界でも普通に起きますし。 なので、この本は「過去との折り合いがつけられず足が止まりやすい人」にほどよく効くと思います。ミステリとしての面白さはもちろんありますが、それ以上に“気持ちの奥に居座っている正体のわからないもの”と向き合う勇気を、少しだけ貸してくれる作品です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの43%が集中しています。
読書の順序
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