
ブラックサマーの殺人 ワシントン・ポー (ハヤカワ・ミステリ文庫)
M W クレイヴン、東野 さやか
この本について
ときどき、自分が「正しいと思い込んできたこと」を手放せなくて、でもどこかで苦しくなる瞬間ってありますよね。仕事でも人間関係でも、もう役に立っていないはずの“古い前提”にしがみついてしまう。頭ではわかってるのに、感情がついてこない。僕もよくそのループに入ります。 『ブラックサマーの殺人』を読んでいて響いたのは、まさにその“思い込みとの決別”を主人公のポーが何度も迫られるところでした。たとえば、長年信じてきた雑学が根底から否定されて、言い訳しながらも内心で揺らいでいく感じ。あるいは、過去に犯した判断が揺らぎ、正義のために動いたつもりが本当に正しかったのか分からなくなる迷い。ミステリなのに、こういう心の揺れがやけにリアルで、仕事の判断に悩む自分にも重なりました。 もうひとつ、この作品が効くのは“二つの感情を同時に抱える難しさ”を描いているところです。怒りと理性、確信と疑念。そのどちらかを選べと言われがちな場面で、ポーは両方を抱えたまま前に進む。チェロキーの老人が語る「内なる二匹のオオカミ」の話もそうで、感情を切り捨てるんじゃなく、どう折り合いをつけるかが描かれているのが印象的でした。 派手なトリックだけで読む人より、“自分の判断に責任を持たざるを得ない仕事をしている人”に刺さる一冊だと思います。迷っているときほど、ポーの葛藤が妙に励みになる作品でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第9章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの47%が集中しています。
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