
打ちのめされるようなすごい本 (文春文庫)
米原万里
文藝春秋 / 2009-05-10
この本について
ときどき、自分の考えが「どこまで自分のものなのか」がよく分からなくなることがあります。社会や組織の空気に引っ張られているだけなのか、それとも自分で選び取っているのか。頭では自由を求めているのに、その自由が本当に機能しているのか疑わしくなる瞬間があるんですよね。 『打ちのめされるようなすごい本』を読んで改めて感じたのは、「自由」や「選択」といった言葉は、条件が整っていないと簡単に強い側の論理に吸収されてしまうということでした。ソ連時代の民族帰属の制度や、母語を守るための国家的な支えが失われた後の状況など、教科書では触れにくいリアルが静かに突き刺さります。また、記憶とテクノロジーの関係について、プラトンを引き合いに出しながら語る場面では、私たちが日常的に感じている「便利さの裏で失っているもの」が急に輪郭を持ちます。遠い国や時代の話のようでいて、いまの生活の足元にも通じてくるところが多いのがこの本の面白さです。 もう一つ印象的だったのは、多数派の文化が当たり前のように広がっていく力の強さについて触れた部分。市場経済の文化が”選択の自由”という名目で、実は画一化を進めていく過程は、自分の働き方や価値観がいつの間にか外側の論理に寄っていく感覚に近いものがあります。この本は解決策をくれるわけではありませんが、何に流され、何に影響されているのかをいったん立ち止まって見る助けにはなります。 自分の「選び方」に少しでもひっかかりを感じている人には、ゆっくり効いてくる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの50%が集中しています。
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