
この本について
人間関係でも仕事でも、自分の基準がぶれる瞬間ってありますよね。周りの声や状況に合わせているつもりなのに、どこか落ち着かない。何に合わせればいいのか分からなくなる時、僕はけっこうこの小説の冒頭の描写を思い出します。オーボエの音に全員が合わせる、というあの静かな場面です。 赤川次郎の『マリオネットの罠』は、いわゆるミステリーなんですが、ただ事件を追うだけではなく、「自分は何に従って生きているのか」をふと考えさせられる物語でもあります。オーボエが一番狂いにくいから基準になる、という説明は、小さなことのようで、日常にもそのまま持ち込める感覚でした。忙しい時ほど軸を外しがちですが、実はそこまで大げさな話ではなくて、狂いにくいもの、つまり自分の中で静かに確かだと思えるポイントを一つだけ持てばいいのかもしれない、と。 さらに、主人公の家族の過去が語られる部分には、立ち直ったように見える人でも背後に長い時間がある、という現実味があります。だからこそ登場人物たちの選択に、妙に納得してしまう瞬間が多いんです。ミステリーなのに、どこか人の感情の距離感が丁寧に描かれているのが心地よくて、読後もしばらく余韻が残りました。 自分の軸を探しながら人間関係に疲れがちな人に、とくに刺さる一冊です。
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