
定本 黒部の山賊
伊藤 正一
山と溪谷社 / 2019-02
この本について
日々仕事に追われていると、ふと「自分の感覚って鈍ってきてないか?」とか「同じ場所に長くいると気持ちまで縮んでいく気がする」と思うことがあります。私もそうで、環境に慣れすぎると判断が雑になったり、気づけば余裕がなくなったりします。そんな時に読み返したのが『定本 黒部の山賊』でした。 この本に出てくる抜粋を見ていると、読者の方は“極限の環境で人がどう変わるのか”という部分に強く反応しているように感じます。たとえば「二十日間で急に能率が落ちる」「聞こえるはずのない音が聞こえてくる」といった描写は、単なる山の怪談ではなく、環境が人の感覚や思考をじわじわと揺らしていくリアルそのものです。私自身も、仕事で疲れ切った時に細かい計算を間違えたり、妙な音に敏感になったりすることがあって、あれと似ているなと妙に腑に落ちました。 また、山小屋の人たちが「おどけてよくしゃべる」のは、長い孤独の中で自分を保つための知恵なんだという視点も、普段の生活に持ち帰れるところがあります。仕事場で冗談を言い合うのも、実は生き延びるための工夫なのかもしれない。そう思うと、自分の“弱さ”や“変な癖”も少しだけ許せるようになりました。 極端な環境での人間の揺らぎを知りたい人、あるいは「自分ばっかり不調になる理由が分からない」と感じている人に刺さる本です。山の話なのに、読んでいると自分の生活の輪郭が少しはっきりしてくる。不思議だけど、そんな読み心地の一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第7章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの20%が集中しています。
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