
わたしがいなかった街で(新潮文庫)
柴崎 友香
新潮社 / 2014-12-01
この本について
最近、人との距離感がつかめなかったり、過去のある瞬間だけが急に重たく浮かび上がってきたり、なんでもない金曜の夜に「もうどこにも入り込めないな」と感じたりすることが多い人っていると思います。大きな事件や戦争のニュースを見ても、自分の生活とどうつながっているのかよくわからないまま、それでも世界のどこかで続いている何かに引っ張られる感じが残る。自分も同じで、ふと立ち止まったときに「ここにいる理由」のようなものがわからなくなる瞬間があるんです。 『わたしがいなかった街で』は、そういう説明しにくい揺らぎを、物語というより“感覚の連なり”として見せてくれます。祖父の生死の分岐から、自分が存在しなかったかもしれない世界を想像してしまう感じ。誰もいない住宅街を歩いていて、ただの空気の温度が急に幸福にも虚無にも思えてしまう瞬間。人と話すとき、どのモードで接すればいいかわからなくて固まるあの居心地の悪さ。こういう細部が、こちらの日常の感度とぴったり重なるんです。無理に前向きな答えを押しつけるわけじゃなくて、「その揺れ方、わかるよ」とそっと隣に立ってくれるような読み味です。 世界の大きな出来事と、自分が目の前で見ているただの風景が、実は同じ時間の中にあるんだと気づくとき、自分の生活の輪郭が少しだけ見える。そういう瞬間に触れたい人には、とても合うと思います。特に、名前のつけられないモヤモヤを抱えたまま歩いている人に刺さる本です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第6章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの19%が集中しています。
読書の順序
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