
この本について
仕事でも日常でも、何かを変えたいと思いながら、結局いまの考え方の延長線でしか動けていないな…と感じる時があります。自分なりに勉強しているつもりでも、土台の前提そのものが凝り固まっているのでは、とふと不安になるあの瞬間です。 『アームストロング砲』を読んでいて面白いのは、まさにその「前提のずれ」が物語の軸になっているところでした。葉隠の精神で育った藩主が、結局は観念ではなく近代工業に道を開こうとしていたり、洋学を学び続ける田中儀右衛門に周囲が次第に教えを乞わざるをえなくなっていく空気感がリアルなんです。自分の信じてきた世界のほうが、じわじわと時代に負けていく。そのときどう動くのかという緊張が、人ごとに思えませんでした。 特に、佐賀藩の内部で“わずかに劣っているからこそ変わろうとする”気風が芽生えていくくだりは、いまの自分にも置き換えられます。完璧じゃないからこそ学びに向かえるし、外から来た知識を受け入れた人から風向きが変わっていく。そんな地味だけど確かな変化を描いてくれるので、背中を押されすぎない距離感で読めます。 歴史の大きな事件よりも、「考え方が切り替わる瞬間」に興味がある人には特に刺さると思います。自分の思考の癖を静かに揺らしてくれる一冊でした。
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