
坂の上の雲(一) (文春文庫)
司馬遼太郎
ディスカヴァー・トゥエンティワン / 2009-11-01
この本について
仕事で行き先を迷ったり、「自分だけ取り残されてるのでは」と落ち着かなくなる時期ってありますよね。努力すべきだとは思うのに、どこに力を入れればいいかが見えにくい。周りの成功談を聞いても気持ちがざわつくだけで、結局なにを指針にすればいいか分からない。そんなときに『坂の上の雲』を読むと、少し呼吸が整う感じがありました。 この巻に描かれる松山の空気や、没落した士族の子が「まず食うこと」を考えながら時代の波に巻き込まれていく姿に触れていると、立派な志よりも、環境に押されながら探していく等身大の歩き方がむしろ普通なんだと思えてきます。たとえば、好古が「勉強すればご飯が食べられる」という単純な理由で大阪に出るところや、子規が陽気さのまま東京に飛び込んでいくところ。そのどれもが後から意味づけされただけで、当人たちは迷いと現実の折り合いの中で動いているだけなんですよね。読んでいると、自分の選択の不格好さもそんなに悪くないと思えてきます。 もう一つ効いたのは、「おのれの意見もない者が他人の意見を読むと害になるばかり」という一文。情報の洪水に振り回されがちな自分には、ちょっと刺さりました。まず自分の足場をつくること。その上で外の世界を取り込むこと。明治の若者たちも、藩意識や貧しさや劣等感を抱えたまま、それでも前に出るしかなかったんだなと感じます。 迷いながら進んでいる人、道が一本に定まらないまま日々を積んでいる自分に少し肩の力を抜かせたい人には、しずかに効いてくる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第4章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの17%が集中しています。
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