
この本について
知らない場所に行くのが好きなのに、いざ旅先に立つと「楽しめてるのかな」とそわそわしてしまうことがあります。あるいは、人との出会いや別れに敏感で、嬉しいのにどこか胸が重たくなる……そんな感覚に覚えがある人も多いはずです。私もそうで、旅は好きなのに、肝心の「自分」との距離感がつかめず、いつも少し戸惑っていました。 角田光代さんの『世界中で迷子になって』は、その迷いに静かに寄り添ってくれる本です。旅が上手くなる方法が書いてあるわけではありません。でも、旅先で不安がほどけて町の立体感が見えてくる瞬間や、知らない土地で自分に頼らざるを得ない心細さ、そしてそこから生まれる小さな自信が、とても実感を伴った言葉で描かれています。読んでいると「不安になるのは、ちゃんと未知に触れている証なのかもしれない」と思えてくるんです。また、人と場所を知ることで“かなしみの種類が増える”という視点も、無理にポジティブに変換していないところが正直で、自分の感じ方ごと許されるような気がしました。 旅が好きな人はもちろんですが、自分の“眼”の育ち方や、年齢を重ねて変わったもの・変わらなかったものに思い当たる人にも響くはずです。どこかで迷子になり続けている感じのする人に、そっと灯りを置いてくれる一冊です。
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