
この本について
仕事でも日常でも、複数の「似ているようで似ていない出来事」が続いたとき、頭のどこかで気にしながらも、結局うまく整理できないことってあります。理由が分からないまま薄い不安だけが残って、結論を急ぐわけにもいかない。そんな宙ぶらりんな感じに、ずっと居心地の悪さを覚えていました。 『どこの家にも怖いものはいる』を読んでいて印象的だったのは、その「説明のつかない薄い連続性」をじっと見つめさせられるところです。三つの話に共通する正体のない後味や、ミッシングリンクの概念を編集者と語り合う場面は、こちらが抱えているモヤモヤの構造をそのまま手元に置いてくれるような感覚がありました。曖昧さを強引に言語化するのではなく、「似ている気がする」「でも断言できない」という人間の勘の曖昧な部分を、そのまま扱ってくれるのが心地よいです。 さらに、各話に出てくる“怖さ”も、派手な怪異ではなく、半歩だけ現実に近い形で描かれています。たとえば暗い廊下で何かの気配を誤認し、後ずさりしながら自分の判断を疑い続けるあの感覚は、怪談というより「自分の認知が揺らぐ瞬間」に近い。こういう描写が積み重なることで、日常の中にある微細な違和感の扱い方を少しだけ変えてくれる気がします。 曖昧さに耐えながら整理しようとする人、答えが出ない不気味さと共存している人には、かなり刺さる一冊です。
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