
この本について
なんでもない一日が、あとから思い出そうとしてもまったく思い出せないことってありますよね。働いて帰って、ご飯を作って、気づいたら寝ていて、「今日は何をしていたんだっけ」と自分でも判然としないまま日が過ぎていく。忙しさというより、生活に輪郭がなくなっていくような感覚に、ふと不安になることがあります。 『俳句と暮らす』を読んでいて刺さったのは、そんな“形のない日々”が、俳句を通すと急に手ざわりを持ち始めるという話でした。季節の移り変わりに少し敏感になるだけで、次の季節を迎えるのがうれしくなる。散歩の途中で見つけたささやかな変化や、台所で旬の食材に触れた感覚が、その日の記憶として確かに残る。五七五の短い言葉がきっかけになって、自分の中の抽斗が開き、忘れていたはずの景色がふっと立ち上がる。そのプロセスが、日々の輪郭を取り戻してくれるんだと思います。 この本は「俳句をやれば人生が変わる」といった強い話ではなくて、むしろ日常の片隅に静かに寄り添う感じです。病気と向き合う人が俳句に救われた話もあれば、サラリーマンの一句ににじむ矜持や侘しさもある。どれも大げさじゃなく、「自分の暮らしの中にもこういう瞬間があったな」と思い出させてくれます。日々をちゃんと生きている感覚を取り戻したい人に、ほんの少し届けばいいなと思って紹介しました。
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