
科学立国の危機―失速する日本の研究力
豊田 長康
東洋経済新報社 / 2019-02-01
この本について
研究の世界を少しでもかじったことがある人なら、「なんで日本の研究って停滞してるんだろう…?」と薄々感じているところがあると思います。現場の忙しさや、予算の少なさ、博士進学の不安定さ。原因は一つじゃないと分かっていながらも、全体像がつかみにくい。そのモヤモヤを放置したまま、自分だけ頑張ればなんとかなるのか…と立ち止まることが増えていました。 この本は、そんな霧のかかった感覚に「どこで何が起きているのか」を数字で淡々と示してくれます。たとえば、研究人件費が先進国で最低レベルのまま十数年動かなかったことが、研究従事者数の伸びのなさにつながり、その結果として論文数が落ちた、というつながり。あるいは、運営費交付金が最初から上位大学に集中していて、大学間の格差が構造的に固定されているという話。こういう構造を知ると、「自分の努力不足」では説明できない背景が見えてきます。 読んでいて印象的だったのは、教育負担が増えるほど研究時間が削られ、私立大学ほどそのしわ寄せが大きいという記述です。現場の実感と数字がぴたりと重なり、「そりゃ研究が進まないわけだ」と腑に落ちる感覚がありました。だからといって、この本は悲観に引きずるだけではなく、各国の例をもとに「資金と人を増やした国は、数年遅れて論文数が増えている」という事実も示しています。問題の原因と、改善の手がかりが同じフレームで見えるのがありがたいところです。 日本の研究環境がなぜこうなったのかを、感情ではなく見取り図として理解したい人に刺さる一冊です。
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多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの45%が集中しています。
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