
この本について
時代や立場が変わると、同じ「歴史」でもまったく違う顔を見せてきますよね。教科書で習ったことと、自分が大人になって感じていることのズレに、なんとなく居心地の悪さを覚える人は多いと思います。とくに天皇制まわりは、触れてはいけない空気と、知りたい気持ちがずっと同居していて、そのまま棚に上げ続けてきた感覚があるというか。 『実録・天皇記』を読むと、その曖昧さが一度ほぐれる感じがしました。たとえば「昔の人は天皇を絶対視していた」という一本調子のイメージが、実はもっと揺らぎの中にあったことがわかります。敗戦後に“自称天皇”が続出した話なんて、その象徴ですよね。血統を神話化しすぎると、かえって現実が歪む。そういう人間くささに触れることで、歴史がやっと地続きに感じられるんです。また、スターリンの不老長生への執着まで登場して、権力者が「超人」であろうとしてしまう心理が国を超えて似ている、という視点もおもしろいところでした。 形式や象徴の背後にある「ただの人間としての天皇」を描いてくれるので、神話と現実のどちらにも寄りすぎず、自分の頭で考える足場をくれます。天皇制を肯定したい人にも否定したい人にも向けた本ではなく、もう少し自分の感覚に近い言葉で歴史を眺めたい人にしっくりくると思います。 「本当はこのテーマを避けてきたけれど、一度フラットに向き合ってみたい人」に刺さる一冊です。
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