
扇物語
西尾維新、VOFAN
講談社 / 2020-10-28
この本について
人間関係で「謝ってほしいのに謝られない」ときの、あのどうしようもない詰まりってありますよね。気にしないほうが楽だと頭では分かっていても、喉の奥に何かが引っかかったまま動けなくなる感じ。僕もけっこう長くそこに立ち止まってしまうタイプなんですが、『扇物語』を読んだとき、その詰まり方そのものに言葉が与えられた気がしました。 この本が効くのは、問題を解決してくれるからではなく、「そういう状態って確かにあるよね」と物語の側が先に認めてくれるからだと思います。謝罪を“儀式”として描くところなんてまさにそうで、誠意の有無よりも、形式が整っていれば人は納得に辿りつけることがあるという視点が、妙に現実的で救われました。逆に、謝らない相手を無理に許さなくてもいいという言葉は、責任感の強い人ほど染みるはずです。 そして、この物語は誰かを一方的に理解した気になる危うさも描きます。登場人物の背後には“よく分からなさ”がずっと残り続けて、その距離感が人間関係のリアルさにつながっている。分からないままでも関わり続けるという状態に、名前をつけてくれるような読書体験でした。 「許す/許さないの間でずっと足が止まっている人」に刺さると思います。僕と同じように、感情の整理に時間がかかるタイプなら、どこかに小さく息がしやすくなる場所が見つかるはずです。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの50%が集中しています。
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