
文化の脱走兵
奈倉有里
講談社 / 2024-07-11
累計読者数3
平均ハイライト数 4.7件/人
推定読了時間 約2時間20分
star総合評価 35/100
start序盤集中型
check_circle推定完走率 18%
この本について
人と話していると、相手の言葉の裏を読みすぎたり、自分の立場や属性を意識しすぎてしまって、うまく呼吸ができないような感覚になることがあります。何が正しいのか、自分はどこに立っているのか、はっきり言えないまま日々が過ぎていく。私もよくそこで迷います。 『文化の脱走兵』は、その迷いを強引に整理してくれる本ではなく、むしろ「そんなふうに揺れてしまう人間でいいんだ」と示してくれる一冊でした。たとえば、子どものころの泥だんごの話や、「猫になりたかった」という素朴な欲求の記憶が、ただの回想に留まらず「どうやって自分という輪郭ができていくのか」を実感として思い出させてくれる。あるいは、国や肩書きという枠を外して相手の「目の奥」を見るという教師の言葉が、他人を見る姿勢を静かに整えてくれる。さらに、知識を振りかざす人に怯えず、自分の声で反対を示していいという章は、ニュースを前に立ちすくみがちなときに背中を押してくれます。 大げさに世界を変える話ではなく、視点の角度がほんの少し変わることで、自分の中の余白が広がるような読後感があります。過去の偶然がゆっくりつながっていく描写にも、焦って答えを出さなくていいんだと救われました。 自分の感じ方を急いで正解に合わせようとしてしまう人に、しっかり届く本だと思います。
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出版社による紹介
本を片手に、戦う勇気ではなく逃げる勇気を。 言葉を愛する仲間たちに贈る、待望のエッセイ集。 「国でいちばんの脱走兵」になった100年前のロシアの詩人、ゲーム内チャットで心通わせる戦火のなかの人々、悪い人間たちを化かす狸のような祖父母たち──あたたかい記憶と非暴力への希求を、文学がつないでゆく。 「もし本が好きになったら──私たちがその人たちを見つけて、めいっぱい大切にしよう。世界中のたくさんの本を翻訳して、朗読して、笑ったり泣いたりしよう。」(「クルミ世界の住人」より) 紫式部文学賞を受賞したロングセラー『夕暮れに夜明けの歌を』の著者による、最新エッセイ集。 【もくじ】 クルミ世界の住人 秋をかぞえる 渡り鳥のうた 動員 ほんとうはあのとき…… 猫にゆだねる 悲しみのゆくえ 土のなか 道を訊かれる つながっていく 雨をながめて 君の顔だけ思いだせない こうして夏が過ぎた 巣穴の会話 かわいいおばあちゃん 年の暮れ、冬のあけぼの 猫背の翼 あの町への切符 柏崎の狸になる あとがき 文化は脱走する 【装幀】 名久井直子 【装画】 さかたきよこ
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