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ハンチバック (文春文庫)

ハンチバック (文春文庫)

市川 沙央

文藝春秋 / 2025-10-07

累計読者数5
平均ハイライト数 7件/人
推定読了時間 約1時間24分
star総合評価 44/100
boltライト読書型

この本について

ときどき、自分が当たり前と思ってきた世界のほうが実は偏っているんじゃないか、と不意にざわつくことがあります。読書が好きで、本に救われてきたつもりなのに、その文化自体が誰かを排除しているかもしれない、と考え始めると足が止まる。けれど自分には当事者として語れるものがないから、ただモヤモヤを抱えたままになることも多いです。 『ハンチバック』を読んで強烈だったのは、その「自分が見えていなかった位置」を突きつけられる感じでした。紙の本を読むことがどれだけの条件を要求しているのかとか、生きるために身体が壊れていくとはどういう実感なのかとか、想像では届かない領域を、著者が具体的な身体感覚として差し出してくる。綺麗ごとにしないのに、ただ怒りを投げつけているわけでもなく、読者が受け止められるぎりぎりのラインで言葉が置かれているのがすごいです。特に「生きるために壊れる」というフレーズは、読後もしばらく頭から離れませんでした。 もう一つ効いたのは、著者が「自分だって迷って揺れている」ことを隠していないところです。強い言葉を書いたことでうろたえる姿や、隣人の生き方に追いつけない自分を正直に語る姿に、こちらの身勝手な想像が少しずつ剥がされていく感覚がありました。だからこそ、この本は障害やマイノリティについての“正しい知識”を得るための本というより、自分が無自覚に寄りかかっていた前提をいったん外してみるための本なんだと思います。 自分の「当たり前」が他の誰かを苦しめているかもしれない、と感じたことのある人には特に刺さる一冊でした。

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書籍情報(出版社紹介・目次)expand_more

出版社による紹介

23の国と地域で翻訳決定! 芥川賞受賞作 【2025 国際ブッカー賞ロングリスト】【2025全米図書賞・翻訳文学部門ロングリスト】に選出! 23の国と地域で翻訳決定。話題沸騰の芥川賞受賞作がついに文庫化! 「私の身体は生きるために壊れてきた。」 井沢釈華の背骨は、右肺を押し潰すかたちで極度に湾曲している。 両親が遺したグループホームの十畳の自室から釈華は、有名私大の通信課程に通い、しがないコタツ記事を書いては収入の全額を寄付し、18禁TL小説をサイトに投稿し、零細アカウントで「生まれ変わったら高級娼婦になりたい」と呟く。 ある日、グループホームのヘルパー・田中に、そのアカウントを知られていることが発覚し——。 【文庫版の特徴】 ・ルビを大幅に増やしました。 ・著者が執筆にあたり大きな影響を受けたと語る『凜として灯る』の著者・荒井裕樹氏との往復書簡「世界にとっての異物になってやりたい」(「文學界」2023年8月号)は、大変話題となりましたが、今回新たな書簡を特別付録として追加し、全文を巻末に収録しました。 単行本 2023年6月 文藝春秋刊 文庫版 2025年10月 文春文庫刊 この電子書籍は文春文庫版を底本としています。
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