
この本について
日々の出来事って、気づくとすり抜けていきますよね。何か書き残したい気持ちはあるのに、「特別なことなんてないし」「感想もうまく言葉にできないし」と、結局そのまま流れてしまう。僕もずっとその繰り返しでした。でも、後になって思い出そうとしても、昨日の自分のことですら驚くほど何も残っていなかったりします。 古賀及子さんの『私は私に私が日記をつけていることを秘密にしている』は、そんな「書けなさ」の焦りをほどいてくれる本でした。日記は“何か立派なことを書く場所”ではなく、むしろ“忘れてしまうような5秒をそっと置いておく場所”でいい。感想をひねり出さなくてもよくて、ただ見たものや起きたことを吊るすように並べておくと、あとから勝手に風が吹いて意味が浮かび上がってくる。自分を追い詰めなくてもいいんだと気づくと、書くことが少し楽になります。 もうひとつ救われたのは、「自分が世界の中心じゃない書き方」を目指す姿勢でした。自分の物語を整形しようとしないことで、かえって現実の手触りが戻ってくる。昨日のメモを“スパイからの報告書”みたいに受け取るという発想も、肩の力が抜けてちょっと笑ってしまいました。 特別な感性がなくても書けるようになりたい人に刺さる本です。ぼんやり生きている自分にも、書けることはいくらでもあるのだと思わせてくれます。
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