
劒岳〈点の記〉 (文春文庫)
新田 次郎
文藝春秋 / 2006-01-10
この本について
日々、仕事でも人生でも「やろうと思えばできるんだけど、どうにも踏み出せない」という場面ってありますよね。理由は分からないけど腰が重いとか、自分の力量を測りきれずに立ちすくむ感じ。僕もよくそこで足が止まってしまいます。 『劒岳〈点の記〉』を読んでいて強く残ったのは、登山という極端に過酷な行為の中に、人が一歩踏み出すときのリアルな揺れがそのまま描かれているところでした。例えば「登ろうと思えば登れる」という言葉に含まれる静かな自負や、「雪を背負って登り、雪を背負って帰れ」という受け継がれた覚悟。これは努力論ではなく、ただ自分の役割を丁寧に引き受ける人たちの姿なんですよね。そこに、やらなきゃと思いつつ迷っている自分の背中をそっと押すような感覚がありました。 さらに、山を神でも仏でもあると捉える語りや、「山気、霊気に触れて来ればいい」という柔らかさにも救われます。成果とか正しさに縛られがちな日常から少し距離を置いて、ただ目の前の仕事や挑戦に静かに向き合う視点を取り戻させてくれる。山に登る理由が人それぞれでいいように、自分が進む理由も別に立派じゃなくていいんだと思わせてくれます。 挑戦したい気持ちはあるのに、自分の足が前に出ないとき。この本は、無理に鼓舞するのではなく、現実の重さも迷いも受け止めた上で前に進む感覚を思い出させてくれます。自分のペースで踏み出したい人に刺さる一冊です。
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ハイライト密度
多くの読者は第6章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの25%が集中しています。
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