
波のうえの魔術師 (文春文庫)
石田 衣良
文藝春秋 / 2003-09-10
この本について
投資でも仕事でも、数字を追っているはずなのに、自分の判断が「なんとなくの勘」に寄ってしまう瞬間ってありませんか。流れが変わった気がしても動けなかったり、逆に強気になりすぎて引き返せなかったり。頭で考えているつもりが、結局は自分の欲望や不安に振りまわされているだけなんじゃないか…と、あとになって気づくやつです。 『波のうえの魔術師』を読んで思ったのは、ここで描かれている“値動きの感覚”って、投資に限らず、生き方そのものに通じるなということでした。数字の裏にある波のリズムをつかむとか、欲を細かく分割して扱うとか、一度決めた前提にしがみつかずリセットするとか、どれも現実の場面に置き換えると痛いほどわかるんですよね。例えば、自分が勝手に「これが底だ」と思い込んで選択肢を狭めていたり、流れが変わっているのに動けずに消耗していたり。作中の老人が淡々と教えてくることが、妙に胸に刺さるのはそのあたりです。 そして、ただ派手な勝ち方を語る話ではないのが、この本の好きなところです。銘柄を絞る、資金を細かく動かす、毎日の終値を書き写して馴染ませる。そんな地味な行動からしか、ほんとうの「見る目」は育たないという姿勢が、読んでいて心地よい。自分の人生の波にも同じように向き合えるんじゃないか、と少しだけ前向きになれます。 慎重すぎる自分に疲れている人、逆に勢いだけで動いて後悔しがちな人には、とくにしっくりくると思います。自分のペースで波を読むってこういうことか、と静かに教えてくれる小説です。
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多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの46%が集中しています。
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