
夜市 (角川ホラー文庫)
恒川 光太郎
秋田書店 / 2018-11-16
この本について
人間関係でふと「この出会いさえなければ、こんな気持ちにならなかったのに」と思ってしまうこと、ありますよね。生まれた場所も、そこで出会った人も、自分では選べない。その不条理に押しつぶされそうになる瞬間って、誰にでもあると思います。恒川光太郎さんの『夜市』を読んでいると、そのどうしようもなさに向き合う気持ちが少しだけ整うというか、自分の中の暗い部分を、無理に片づけようとしなくていいと思わせてくれるんです。 たとえば作中には、「嫌だからって変えられることじゃない」という、どうしようもない気持ちの沈みが何度も出てきます。それをただ否定するのではなく、「あなたの周りがゴミでできていたからといって、世界の全てがそうとは限らない」という別の視点も差し込まれる。現実でもよくありますよね。ひどい経験をしたせいで世界そのものが歪んで見える時に、ほんの少しだけ別の角度を示されることで、自分の感覚がゆっくり戻ってくること。この本はその“ゆらぎの瞬間”を丁寧に描いてくれます。 そして、努力すれば必ず成長できる、みたいな綺麗ごとはここにはありません。「これは成長の物語ではない」と作中ではっきり言い切られる。それでも登場人物たちは、黙って働いたり、鍛えたり、覚悟を決めたりしながら、生きるための姿勢だけは手放さないんですよね。変われる保証がないまま、それでも前に進む姿に、自分の生活の重みを重ねてしまう人は多いと思います。 自分の過去や出会いに引きずられやすい人、あるいは「どうにも回収できない気持ち」を抱えている人に、静かに効く本です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの40%が集中しています。
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