
東京の下層社会 (ちくま学芸文庫)
紀田順一郎
筑摩書房 / 2000-03
この本について
最近、「今の社会のしんどさって、どこから来ているんだろう」と考えることが増えました。ニュースで貧困の話を見ても、説明としては分かるけれど、自分の暮らしにどうつながっているのかはどこか掴みにくいまま。そんなモヤモヤを抱えているときに、この本を読むと、少し視界が変わります。 『東京の下層社会』は、明治〜昭和の都市の底で生きた人たちの生活を、とにかく「細部」で見せてきます。ヨナゲの泥だらけの仕事、娼妓が嘘の病を疑われて剃刀の上を歩かされる場面、残飯にさえ固有の名前がある世界、家主が通り道に立って帰宅した住民から家賃をむしり取る仕組み……読者が保存した抜粋がどれも重たいのは、彼らの生活がただ「かわいそう」ではなく、構造ごと人を追いつめていく様子が、そのまま書かれているからだと思います。 読んでいて感じたのは、歴史の話というより、いまの感覚に直結してくるところが意外と多いということです。「弱い者どうしの疑似的な連帯」が生まれてしまう理由とか、「家は単なる建物ではなく、神を祀るかどうかで境界ができる」という価値観とか、あるいは救護の区分が生活の不安を表す“カード階級”として流行語になる社会とか。現代の言葉とは違っても、根っこにある不安や息苦しさは今と地続きに思えます。 歴史の知識を得るためというより、「社会のしくみが人の生活をどう形づくるのか」を実感としてつかみたい人にはとても刺さる一冊です。私も、漠然とした違和感の正体を少しだけ言葉にできました。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第3章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの19%が集中しています。
読書の順序
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