
この本について
忙しさのせいにして、気づいたら自分の感情を置き去りにしていることってありませんか。何かに心を動かされたいと思いながら、刺激の強い作品を選ぶ気力も湧かない。そんなときほど、子どもの頃に感じていた「うまく言葉にできないざわつき」みたいなものを、そっと思い出させてくれる物語に救われたりします。 宮本輝の『螢川・泥の河』を読んでいると、登場人物のさりげない願いや、幼さが混じった必死さが胸の奥でじわっと広がってきます。読者が抜き出した一文にも、子どもだからこそのまっすぐさや、世界を必死に理解しようとする視点が表れていて、そこに自分の昔の感情が重なる人は多いと思います。そして螢の群れを描く場面では、綺麗事ではなく、生と死が混ざりあった圧倒的な光景として描かれていて、日常の延長にある「どうしようもなさ」を受け止めるための静かな余白が生まれます。 この小さな物語が効いてくるのは、無理に前向きになろうとするよりも、いま抱えている感情をそのまま見つめ直したいとき。過去の自分をそっと拾い上げたい人には、とくに刺さるはずです。
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