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錦繍(新潮文庫)

錦繍(新潮文庫)

宮本 輝

新潮社 / 1985-05

累計読者数10
平均ハイライト数 11.9件/人
推定読了時間 約4時間53分
star総合評価 57/100
menu_book精読型
check_circle推定完走率 40%

この本について

人と向き合うとき、あのときもっと話せばよかったとか、気持ちの奥にあるものを取り違えていた気がするとか、過去の場面がふと胸にひっかかることがあります。私もよくありますし、思い出すたびに、言葉ってこんなに届かないものだったかと思わされます。 『錦繍』を読むと、その「言葉の届かなさ」が静かにほどけていくような感覚がありました。離婚をめぐる往復書簡という形なのに、単なる回想ではなく、相手への怒りや後悔や愛情が、風景や匂い、音の描写といっしょにじわじわ立ち上がってくるんです。読者が保存していた部分にも、恥ずかしさや未整理の感情が、そのまま空気みたいに漂っていますよね。猫と鼠を自分に重ねてしまう瞬間や、死に触れたときの静かすぎる冷静さなど、説明できない心の揺れがそのままページに残っている感じがします。 この小説は、過去に置き去りにした気持ちをどう扱うかに迷っているとき、小さく効いてきます。言葉にできなかった感情が、たとえば風の冷たさや夜の匂いに乗せて描かれているので、自分の中にも似た層があったと思い出させてくれる。もう一つは、生きてきた行為や選択が、自分の中にどう刻まれているのかをそっと示してくれるところです。人生を一刀両断するような答えは提示されませんが、「ああ、こういうふうにしか人は生きられないのかもしれない」と思わせてくれる余白があります。 過去の出来事がふと胸を掴むように蘇る人、あるいは誰かとの関係をやり直せないまま抱えている人には、静かに刺さる一冊です。

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書籍情報(出版社紹介・目次)expand_more

出版社による紹介

「前略蔵王のダリア園から、ドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトの中で、まさかあなたと再会するなんて、本当に想像すら出来ないことでした」運命的な事件ゆえ愛し合いながらも離婚した二人が、紅葉に染まる蔵王で十年の歳月を隔て再会した。そして、女は男に宛てて一通の手紙を書き綴る―。往復書簡が、それぞれの孤独を生きてきた男女の過去を埋め織りなす、愛と再生のロマン。

目次

錦繍.避暑地の猫
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