
地の星―流転の海 第二部―(新潮文庫)
宮本 輝
この本について
最近、自分の「生まれ」や「環境」にうっすら引っ張られている気がすることってありませんか。気づけば親の価値観をなぞっていたり、何かを選ぶたびに説明のつかない迷いが出てきたり。「結局、自分はどこから来て、どこへ向かってるんだろう」みたいなやつです。僕も時々その渦に巻き込まれます。 宮本輝の『地の星』を読んでいて、読者の方が保存していた抜粋を見たとき、刺さる理由がすぐに分かりました。たとえば「きょうは、いばってはいけない日だ」という一文には、強く見せたい気持ちと、本当は弱った自分を認めたい気持ちの同居がそのまま出ているし、「ちちははの血の騒ぎを聴く」という場面は、自分に流れている背景をふと意識してしまう瞬間のあの感覚に近い。さらに「蛇とならざるを得ないものは…」のくだりは、環境が人をどう形づくってしまうかという、少し苦いリアリティがあります。 この物語が効いてくるのは、無理に「親から自由になろう」とか「過去を断ち切れ」と言わないところです。むしろ、迷いながらも自分の輪郭をつかもうとする登場人物たちを追うことで、自分の中にも静かに折り合いがつく部分が出てくる。誰かの秘密に触れて迷う場面や、叱られるかもしれないと怯える子どもの心の動きには、人が変わっていくときの微細な揺れがあり、それが読む側にも反射してきます。 自分のルーツとか、家族との距離感にほのかな違和感を抱えている人には、とくに響くと思います。物語を追っていくうちに、自分の中のどこか静かな場所を、そっと照らしてくれる一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第6章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの30%が集中しています。
読書の順序
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