
岬 (文春文庫 な 4-1)
中上 健次
文藝春秋 / 1978-12-25
累計読者数4
平均ハイライト数 6.3件/人
推定読了時間 約2時間56分
star総合評価 46/100
boltライト読書型
check_circle推定完走率 55%
この本について
ときどき、自分の家族や生まれた場所をうまく受け止められなくなることがあります。誰のせいというわけでもないのに、血のつながりや育った環境が、いまの自分を縛っているように感じてしまう瞬間です。抜け出したいのに、足元にはずっと土のにおいが残っているような、あのやり場のない感覚です。 『岬』を読むと、そのどうしようもない重さと向き合ってきた人間の呼吸が、じわっと肌に移ってきます。家族を嫌いになりたいわけじゃないのに距離を置きたくなる気持ちとか、身体の奥で反応してしまう衝動と理性のズレとか、言葉にしづらいものがごまかさずに描かれています。土地の匂いや、人の声の荒さや、夜の湿気みたいなものがそのまま胸に残るので、自分の中の混ざりものを、いったんそのまま見ていいのかもしれないと思えてきます。 とくに、家族との関係をどう扱っていいかわからなくなっている人や、育った場所に複雑な感情を抱えている人には、静かに刺さる一冊だと思います。自分のルーツを無理に肯定もしないし否定もしないまま、「こういう重たさを抱えたままでも、生きていくことはできる」という位置に連れていってくれる小説です。
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出版社による紹介
作家の郷里・紀州の小都市を舞台に、のがれがたい血のしがらみに閉じ込められた青年の、癒せぬ渇望、愛と憎しみ、生命の模索を鮮烈な文体でえがいて圧倒的な評価を得た芥川賞受賞作。この小説は、著者独自の哀切な主題旋律を初めて文学として定着させた記念碑的作品として、広く感動を呼んだ。『枯木灘』『地の果て 至上の時』と展開して中上世界の最高峰をなす三部作の第一章に当たる。表題作の他、初期の力作「黄金比の朝」「火宅」「浄徳寺ツアー」の三篇を収める。
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