
煙か土か食い物 (講談社文庫)
舞城王太郎
この本について
日常を普通にこなしているつもりでも、ふと自分の足元がぐらっとする時があります。家族のことを思い出した瞬間だったり、自分の過去のどこかがまだ疼いていたり、「結局、人はどこから来てどこへ行くんだろう」と考えだすと止まらなくなるようなあの感じです。仕事の悩みとは少し違うのに、放っておくとずっと内側に残り続ける種類のモヤモヤです。 舞城王太郎の『煙か土か食い物』は、そのモヤモヤを強引に言語化せず、むしろ真正面から一緒に覗き込むタイプの小説です。抜粋を見ても分かるとおり、この作品には「家族の残酷さがふいに吹き込んでくる瞬間」や「自分の連続性がふとちぎれるような感覚」が何度も出てきます。読んでいてしんどいところもあるけれど、あの恐怖や虚しさに形が与えられると、自分の中の同じ部分が少しだけ整うというか、ああ自分の感じていたあれはこれに近かったのかもしれない、と気づけるんですよね。 さらに、この作品が効くのは「どうせ最後は煙か土か食い物」という極端な言葉が、悲観ではなく現実の線の太さとして響くところです。無常だからこそ、家族にしろ自由にしろ、どこでつまずき、どこで救われていたのかを冷静に見られるようになる。人生の意味を大きく語らないのに、読み終わると妙に呼吸が整うのがこの作品の不思議なところです。 家族との距離感に疲れてしまった人、自分の内側に曖昧な裂け目を感じている人、あるいは「説明できない痛み」を抱えたまま日々を続けている人にはかなり刺さると思います。読みやすい物語ではないけれど、心の深いところを確かめたい時には頼れる一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの33%が集中しています。
読書の順序
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