
華麗なる一族(上)(新潮文庫)
山崎豊子
この本について
仕事をしていると、自分の置かれている世界の「力関係」や「空気」が、言葉にしにくいままじわじわ効いてくるときがあります。組織の論理に振り回されているのか、自分がどう立ち回ればいいのか、よく分からなくなるあの感じです。正面から相談できる話でもないし、割り切ろうとしても割り切れない。そんなときに、フィクションの形を借りて“構造そのもの”を見せてくれる作品に出会うと、少し息がつけます。 『華麗なる一族(上)』を読んだ方の抜粋を見ていると、刺さっているのは銀行の仕組みや政官との距離感といった背景だけではなく、人が組織の中でどう評価され、どう切り捨てられ、どんな論理で動かされていくのかという、生々しい部分なんだろうと思います。東京事務所の政治的な役割、店舗新設にすら官庁の認可が絡む重たさ、人事の基準が「役立つか」「使えるか」に単純化されていく冷たさ。こうした描写を追っていくと、現代の会社で感じるモヤモヤの根が、案外ずっと昔から続いているものなのだと理解できてきます。 もう一つ効いてくるのは、登場人物それぞれが“何を重んじて生きているか”が、行動の端々から伝わってくるところです。家柄や係累がものを言う世界に嫌気が差しながらも、その中でどう立つかを考えざるを得ない人物たちの姿は、自分の価値観と仕事上の現実がズレてしまうときのあの心の重さに近いものがあります。だからこそ、単なる権力闘争の物語としてではなく、自分の働き方や判断の癖を少し離れた位置から見直すきっかけにもなるのだと思います。 組織の中で「このままでいいのか」と密かに考えてしまう人に、静かに響く一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第2章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの26%が集中しています。
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