
この本について
仕事で何かを「見るべきなのに見落としていたな」と感じる瞬間って、けっこうあります。風景でも、人の言葉でも、自分の感情でも、目の前にあるはずなのに輪郭がつかめない。そんなときに俳句の本なんて関係あるのかなと思いきや、この『定本 現代俳句』は意外とそのモヤモヤに効いてくる本でした。 読者が保存していた抜粋を見ていると、どうやら「見ようという意志と忍耐を持った者だけが見える風景」が何度も刺さっているように思います。豪華な桜を“影”で描く視点、紫陽花の色の変化を手がかりに秋の雨を見る感覚、行く自分ととどまる相手にそれぞれの秋を見てしまう心の動き。こうした読み解きの積み重ねが、「ただの情景」が「世界をどう捉えるか」に変わっていくんですよね。 この本が面白いのは、俳句そのものよりも、俳句を通して“認識の刻印”がどう生まれるかに触れられるところです。切れ字が意志だという指摘も、日常で何かを判断するときの「ここだ」という決定に近い感覚がありますし、作者の弱さや限界まで含めて句を読む姿勢は、作品を神棚に上げない現実的な距離感を教えてくれます。 特に刺さるのは、「ありふれた風景なのに、誰もほんとうには見なかった風景」という部分です。これって仕事でも人間関係でも、そのまま当てはまる人が多いと思います。身の回りのものが少し違う光で見え直す感じがほしい人に向いている一冊です。
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