
クローム襲撃 (ハヤカワ文庫SF)
ウィリアム ギブスン and 浅倉 久志・他
早川書房 / 2026-01-07
この本について
仕事でも趣味でも「未来がどうなるのか」を考えようとすると、手が止まることがあります。技術は進んでいるはずなのに、自分の想像は妙に曖昧で、SFを読んでも設定だけが先走って、現実とのつながりが見えないまま終わってしまう。そういうモヤモヤ、けっこうあると思います。 『クローム襲撃』が効くのは、その未来像が“ちゃんと今から地続き”だからです。ギブスンはロボットや宇宙船といった便利な飛躍に逃げず、サイバネやバイオテク、通信ネットの延長線から世界を描いていく。読んでいると、未来を予測するというより、いま自分が立っている地面の先にどんな風景が続いているのかを覗き込んでいる感覚に近いです。ボビイたちが潜るマトリックスはSFらしい幻想なのに、手触りは妙に現実的で、仕事中に向き合っているデータやシステムの“影の世界”を思い出させます。 もうひとつ、この本にはSF作家自身の立ち位置への冷静な視線があります。宮廷道化師というたとえが出てきますが、これは大げさな未来を語る責任から逃げる言葉ではなく、文化の裏側に静かに忍び込んでいくアイデアの力をそのまま受け止めている姿でもあります。大声で世界を変えるのではなく、じわじわと視点をずらす。その感じが読者として心地いいんです。 現実の延長で未来を考えたいけれど、大仰な物語にはついていけない、そんな人に刺さる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの63%が集中しています。
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