
小松左京短編集 大森望セレクション (角川文庫)
小松 左京、大森 望
KADOKAWA
この本について
最近、いろんな価値観やニュースに振り回されて、「自分はどこに立っているんだろう」と急にわからなくなることがあります。進歩しろと言われつつ、進歩の先に何があるのかは誰も教えてくれない。孤独なのか静けさなのか、自分でも区別がつかない時もあります。そんなモヤモヤを抱えたまま日々をこなしている人には、小松左京の短編は意外な形で効いてきます。 この短編集にあるのは、未来技術やSF的ガジェットの派手さというより、何百億もの人が生まれては消えていくスケールの中で人間がどう存在しているのか、という視点のズレです。文明は続いても人は土に還る、という当たり前すぎて普段は考えない事実に触れると、自分の悩みが「小さい」という意味ではなく、もう少し俯瞰して扱えるサイズに変わります。また、人間は放っておいても技術を進めてしまう生き物だ、という冷静な観察にも救いがあります。頑張れと言われなくても、どこかで前に進もうとしてしまうのが人間なら、今の焦りや空回りもそんな本能の延長線に見えてくるからです。 さらに、孤独と寂寥を分けて考えている文章が静かに刺さります。若いころの置いていかれた感じと、過去がゆっくり記憶に変わっていく感覚はまったく別物で、どちらも否定する必要はない。そう思えるだけで、生き急がなくていい気がしてきます。巨大化した世界で人の心が一つにまとまらない、という指摘も今の空気にそのまま重なります。 大げさに人生を変える本ではないけれど、長い時間軸からそっと背中を押してくれる一冊です。自分の小ささと大きさの両方を確かめたい人に刺さります。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの33%が集中しています。
読書の順序
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