
この本について
日々いろんな情報に触れていると、自分の感情の輪郭がぼやけてきたり、何に反応しているのか分からなくなることがあります。気になるニュースを読んでも心が動かない、緊張しているはずなのに身体だけが他人事みたいに鈍い。そんな、自分でも説明しづらいモヤモヤを抱えることが僕にもあります。 「連続殺人鬼カエル男ふたたび」を読むと、その鈍さに少し輪郭が戻る感覚がありました。読者が保存していた抜粋は、物語の派手さというより、「気息奄々」「横紙破り」「俎上」のような言葉の鋭さや、身体感覚がにじむ描写に反応している気がします。中山七里さんの作品は、事件の残酷さよりも、人の判断がどこで狂うのか、その瞬間のざらっとした手触りを丁寧に拾ってくれるんですよね。まるで自分の心の裏側を掘り起こされるような場面がいくつも出てきます。 特に効いてくるのは、強さや正義を振りかざす人物ほど、いつの間にか追い詰められ「他人の身体のようだ」と感じる瞬間に陥るところ。深慮遠謀のつもりが百家争鳴の混乱に飲まれていくところ。そういう“転落のプロセス”が生々しく描かれていて、読んでいるこちらも、自分の思考の癖や危うさを静かに見直すきっかけになります。 刺激的な物語を楽しみつつ、心の奥のざわつきを確かめたい人に刺さる一冊だと思います。
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