
この本について
最近、ニュースを見ても議論をしても、「いま何が正しいのか」がどんどん分からなくなる瞬間が多いなと思います。昔を懐かしむ声と、変わらなきゃという焦りと、どこかで冷める自分。そのせいで判断がぶれたり、人の意見に振り回されたりしてしまう。そんな時に、深代惇郎さんの文章を読むと、いまの景色が少しだけ整って見えるんですよね。 たとえば、議論の本質は「多数派が少数派の批判に耐えられるか」にあるという視点。これだけで、声の大きい意見に飲み込まれそうになる場面でも、自分がどこに立てばいいのかが少し分かります。エープリルフールの話も印象的で、ウソひとつにも“その人の人柄がにじむ”という指摘は、人間関係で悩む時のちょっとした手がかりになります。あるいは、どこに向かうべきか分からないときは「どこから来たのか」を見直す、という一文は、焦りが続く日々にひと呼吸入れてくれる感じがします。 深代さんの文章は、時代背景こそ古いのに、そこで扱われている不安や迷いは今とほとんど同じです。肩に力を入れず読めるのに、読み終わると自分の中の基準がほんの少し澄んでいるような感覚が残るんですよね。「すぐに答えは出ないけど、せめて考え方だけは整えておきたい」という人にちょうどいい一冊だと思います。
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