
人はなぜ憎しみあうのか 「群れ」の生物学 上
マーク W モフェット、小野木 明恵
早川書房 / 2020-09-03
この本について
人間関係で距離感がつかめなかったり、コミュニティに属しているはずなのに妙に孤立している気がしたり。自分だけ温度が合っていないような場面って、意外と多いと思います。僕自身、職場やオンラインの集まりで「結局、人って何をもって“仲間”と感じるんだろう」とよく迷っていました。 この本の面白いところは、そのモヤモヤを「人間だけの特別な悩み」とせず、アリやチンパンジーの社会と並べて見せてくれるところです。人は誰も知らなくても同じ社会に属せるし、物理的に近くにいなくても「互いの存在を知っていること」でつながりが成立する。こういう視点に触れると、コミュニティでの居心地の悪さが、個人の性格の問題だけではなく、もっと大きな構造の中で起きていることなんだと腑に落ちます。また、社会とは“協力する人の集まり”ではなく、“同じアイデンティティを共有している集団”ととらえたほうがしっくりくる、という指摘も日常にじわっと効いてきます。 ここまで読むと、争いや対立をすべて説明してくれる万能の本に思えるかもしれません。でも実際はもっと地に足がついていて、人の集団がどんな仕組みではね返り合い、くっつき、分裂し、またまとまるのかを淡々と追っていく内容です。そのおかげで、自分がいる集団で起きている小さな摩擦にも、少しだけ距離を置いて向き合えるようになります。 職場や趣味サークル、家族の中で「なぜ自分はあの人と噛み合わないんだろう」と感じやすい人に、とても静かに刺さる本です。
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