
この本について
毎日の生活がただ流れていく感じがして、「自分って何を見落としてるんだろう」と思うことがあります。忙しいわりに心が動かないというか、気づけば季節が変わっていたり。そんなときにこの本を読むと、立子の「ハンカチを干せばすなはち秋の空」のような、ごく普通の一瞬にもう少し丁寧に触れてみてもいいのかもしれない、という気持ちになります。 俳句って何か特別な教養や知識がないと楽しめないものだと思っていたのですが、この本で語られるのはむしろ逆で、目的を持たずに景色を眺めるような「余白」そのもの。翌日には忘れてしまうような小さな出来事に心が動くことが、生きている実感につながるという視点に救われます。たとえば、庭に出て線香花火を見ただけの立子の句や、スリッパを越えられない仔猫を黙って指さす虚子の句。あれほど“なんでもない”瞬間が、ちゃんと一つの景色として残る。それが妙に胸に残るんです。 季語を知りながら暮らしてみると、同じ通勤路や家の窓からの景色が少し違って見えるかもしれません。大したことのない日常でも、よく見ると驚きやおもしろさが潜んでいる。そういう視点の変化を、気負わずに渡してくれる本でした。 「変わりばえのしない毎日をもう少し丁寧に味わいたい人」に静かに届く一冊だと思います。
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