
哲学史入門Ⅲ 現象学・分析哲学から現代思想まで (NHK出版新書)
谷 徹, 飯田 隆, 清家 竜介, and 宮﨑 裕助
NHK出版 / 2024-06-10
この本について
日常の中で、自分が見ている世界がどこまで“そのまま”なのかよく分からなくなることがあります。人とのすれ違いも、考えすぎなのか、そもそも前提がずれているのか判断しにくい。そんなとき、「結局、私のものの見方ってどこから始まっているんだろう」と手が止まることがあるんですよね。 『哲学史入門Ⅲ』は、まさにその出発点を丁寧に扱ってくれる本でした。フッサールが言う“現象学的還元”の話は、抽象に見えて、実は「私が忘れていた私の視点をいったん取り戻す」作業なんだと腑に落ちました。他者の存在さえ自明にしない姿勢は、人間関係のもやつきに対しても、いきなり相手を決めつけない余白をつくってくれます。また、科学の説明も一度括弧に入れて、生きている経験そのものを言葉にしていくという発想は、忙しさで感覚が平板になるときの立て直しにも役立ちました。 さらに、分析哲学の章では、言語がどれだけ私たちの考え方を縛っているかが具体的に示されていて、「思考が混線する時は、意味のほうが先に暴走しているのかもしれない」という視点をもらいました。これだけ立場の違う哲学が並ぶのに、共通して“私たちの見方は自明ではない”と繰り返し気づかされるつくりになっています。 自分の見ている世界の“基盤”がどこか不安になる人に向いています。私自身、読んだあとしばらく、目の前の出来事をそのまま流さずに観察し直す癖が戻ってきました。抽象的な議論を扱いながらも、読む側の生活に手が届く一冊です。
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