
すべての月、すべての年 ――ルシア・ベルリン作品集 (講談社文庫)
ルシア・ベルリン、岸本佐知子
講談社 / 2022-04-22
この本について
日常のどこかでふっと、胸の奥がざわつくときがあります。人との距離の取り方だったり、家族の思い出をどう扱っていいかわからなかったり、昔の傷がまだ自分の中で生きている気がしたり。前に進みたいのに、うまく整理できないまま時間だけが流れていく感じ、僕もよくあります。 ルシア・ベルリンの短編集は、そういう「自分でも理由の説明がつかないモヤモヤ」に静かに触れてきます。誰かの死が残す傷の大きさについての一文を読むと、自分の中にしまい込んだ喪失の温度がじわっと戻ってきたり、何気ない「おはよう」みたいなやりとりがどれほど人を支えるかが急にわかったり、日曜日の空虚さの描写が妙にリアルで、あの取り残されたような感覚を言葉にしてもらえた気がしたりします。特別な事件が起きるわけじゃないのに、読み終えると、自分の生活の色が少し変わるんです。 この本の効き方は派手ではないけれど、現実の手触りを失わないまま、視点をほんの少し動かしてくれます。たとえば、誰かとの関係で「うまく距離がつかめない」と感じているとき、自分が覚えていない表情や声の調子が、相手には確かに残っていたという描写が妙に刺さって、人とのつながりの見え方が変わる。あるいは、過去をまるごと抱えるんじゃなくて、捨てながら歩くという選択に、少しだけ現実味が出てくる。そういう変化です。 静かな物語の中に、自分のどこかと呼応する何かを探したい人に向いていると思います。読んだあと、いつも同じはずの日常が、少しだけ違う輪郭を持って見えてきます。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第3章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの19%が集中しています。
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