
Nの逸脱
夏木志朋、からんころん
ポプラ社 / 2025-01-22
この本について
日常を普通にこなしているだけのはずなのに、ふと「自分の中の黒い部分」を持て余す瞬間ってありませんか。誰にも言えない衝動とか、他人の顔色を読みすぎる癖とか、理屈じゃ説明できない妙な確信とか。ふつうに生きたいだけなのに、たまに逸れてしまうあの感じ。僕もよくやらかします。 『Nの逸脱』に出てくる人たちは、まさにその「ちょっと逸れた瞬間」を抱えたまま動き出してしまった人たちです。爬虫類ショップの店員が怪しい客に違和感を持って尾行してしまったり、ストレスを抱えた教師が自分でも説明できない行動を取ってしまったり、占い師が相手の弱さや虚勢に触れすぎてしまったり。どれも極端ではあるんですけど、根っこにあるのは僕らが日常で感じるあの小さなズレの延長線なんですよね。だから読みながら変に冷静になったり、逆にざわっとしたりします。 この本が効くのは、まず「人を見る時の距離感」が変わるところです。人を洞察するって結局、推察の積み重ねでしかないし、それ以上でも以下でもない、という視点が繰り返し出てきます。また、登場人物たちが自分の弱さや勘違いと折り合いをつけようとする姿を見ると、「自分の中の変な部分をどう扱うか」というテーマが、妙に現実的に迫ってくる。その結果、他人の歪さにも、自分の歪さにも、少しだけ優しくなれる気がします。 刺さるのは、「自分の中のズレを無かったことにできない人」。僕自身、この本の人物たちを笑えなかったし、どこかで仲間のようにも感じました。物語としても面白いんですが、それ以上に、自分の中の説明しづらい部分をそっと拾ってくれる一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第4章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの27%が集中しています。
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