
これからの社会のために哲学ができること~新道徳実在論とWEターン~ (光文社新書)
マルクス・ガブリエル, 出口 康夫, 高木 俊一, 辻 麻衣子, and 渡邊 一弘
この本について
最近、誰と話していても「社会がどこに向かうのか全然わからない」とか、「自分の判断基準って本当にこれでいいのか」みたいな不安を共有している気がします。仕事でも生活でも、正解があるようで実はない世界を歩いている感じ。そんなときにこの本を読んで、少しだけ視界がクリアになる感覚がありました。 この本が面白いのは、「わたし」と「われわれ」の関係を、精神論ではなく行為のレベルで捉え直しているところです。人は結局ひとりでは何も完結できない、という当たり前のようで直視しづらい現実を、WEターンという考え方で丁寧に描き出します。それが単に「助け合おう」みたいな話ではなく、ジョギングや歌うことですら“単独では成立しない行為”として位置づけられていくのが新鮮でした。また、必要な他者を完全には制御できないという「できなさ」を弱点ではなく、世界に開かれる契機として扱う視点も、個人的には気持ちが軽くなりました。 もう一つ良かったのは、価値観の多層性に正面から向き合っている点です。いまの社会で「普遍的な価値」が見えにくくなっている理由や、内集団バイアスがどう排外主義につながっていくのかを説明しつつ、それでもどう“われわれ”をつくり直せるのかを考えていく。万人に合う答えを提示する本ではありませんが、価値の座標軸を見失いがちな人には、じわっと効いてくる本だと思います。 自分のなかに複数の価値観が同居していて落ち着かない人、あるいは「社会のこれから」にうっすら不安がある人に刺さる一冊です。
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