
この本について
仕事で人を相手にしていると、「正しいことを言ってるはずなのに、全然状況が動かない」とか、「自分は何に執着しているんだろう」とか、そんなモヤモヤにぶつかることがあります。頭ではわかっているのに、現実はきれいに整理させてくれない。正論だけでは誰も救えない場面に出会うたび、ちょうどいい言葉を持てないまま固まってしまうんですよね。 池井戸潤『ブティック』を読んでいて印象に残ったのは、まさにその“きれいごとでは動かない現場”の描写でした。資金繰りが綱渡りになっていく会社、役員同士の微妙な空気、過去のしがらみを抱えた創業メンバー。登場人物たちは全員が何かを守りたいのに、守り方がすれ違っていく。その中で、「正しいかどうか」ではなく「助けられるかどうか」で判断しようとする姿が、読みながら妙に胸に刺さりました。 もうひとつ、この本が効いてくるのは、視点を少しずらすだけで物事の見え方が変わるところです。たとえばコピ・ルアクの話。奇抜に見えるけれど、閉塞感を突破するために生まれた工夫だとわかった瞬間、経営判断にも人間の思惑にも、別の読み方が生まれてくる。M&Aの丁々発止も、数字の裏にある“人の事情”を拾いながら進むので、自分の仕事にもそのまま置き換えやすかったです。 誰かを動かさなきゃいけないのに、自分の正義だけでは足りないと感じている人。そんな人には、静かに効いてくる物語だと思います。
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