
この本について
最近、人間関係でも家族でも、自分の「感じていること」がどこまで本物で、どこから思い込みなのか分からなくなる瞬間ってありませんか。頭では冷静に判断したいのに、胸のざわつきだけが先に来るようなあの感じです。僕もたびたびそこに迷い込むのですが、『夏帆―The Tale of KAHO―』を読んでいると、その境界の揺れそのものが一つのテーマとして描かれているように思えました。 夏帆が耳の奥で響くモーターサイクルの音に怯えたり、母親の行動に説明のつかない不気味さを感じたり、現実と非現実の線が曖昧になる感覚は、日常でもふと訪れる「あれ、これって本当に起きてることなのか?」という瞬間にとても近いんですよね。ありくい夫婦の言葉が妙に説得力を持って響くのも、僕ら自身が“確かめようのない不安”に答えを求めてしまうからなんだと思います。 この物語が効くのは、現実を正しく整理したい人というより、むしろ整理しきれない揺らぎの中でどう立ち上がるかを探している人です。夏帆が「自分には力がない」と思いながらも、見えない危険に向き合わざるを得なくなる過程には、日常の小さな決断にも重なるところがあるはずです。母親の弱さを受け止め直す場面なんかは、誰かを“正しく疑い、正しく信じる”という難しさをそのまま突きつけてきます。 非現実的なはずの世界なのに、読んでいるこちらの心の奥を静かに揺らしてくる。そういう物語が必要になる時が確かにあって、この本はまさにそのタイミングで手に取ると深く刺さるタイプだと思います。こんな人に刺さる、というより、最近「自分の世界の輪郭がぼやけて見える」人にこそ合う一冊です。
読んだ内容を、もう忘れない。
BookNotion Zなら、Kindleのハイライトを自動で保存・整理。Notionにエクスポートして、いつでも振り返れます。
クレジットカード不要




